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閉塞性動脈硬化症の血管新生療法

    

 

 

 

閉塞性動脈硬化症の血管新生療法について

 

 

                                      救急診療部長 佐藤 一義

 

 

 

 

 

 

 閉塞性動脈硬化症は動脈硬化によって足の動脈の内腔が狭くなり、その末梢に十分血が行き渡らなくなる病気です。症状は図1に示すように、初めは下肢のしびれ感・冷感のみ(1度)ですが、病状が進行すると歩行時に足が痛んだり(間歌性跛行、2度)、さらに進行すると安静時にも痛むようになってきて(3度)、ついには潰瘍が出来たり壊死してきたりします(4度)。

    

 その治療には1度では保存的治療(生活習慣の改善・運動療法・薬物治療)、2度では患者さんのライフスタイルにあわせて保存的治療ないしは血行再建術(カテーテル治療・バイパス手術)が行われ、3、4度では血行再建術がおこなわれてきました。しかしながら中には、血管の状態によっては血行再建術(カテーテル治療・バイパス手術)が不可能な患者様もおられます。このような場合、従来は下肢切断が余儀なくされてきましたが、以後の生活の質が著しく低下します。このような場合の治療法として近年血管新生治療が登場してきました。
新生治療には大きく分けて遺伝子治療と細胞移植による新生治療があります。1997年に成人末梢血の中の単核球という血球細胞の中に血管に分化しうる血管内皮前駆細胞が発見されました。未熟ないろいろな組織に分化しうる能力をもった幹細胞から新しく血管が分化発生するという血管新生が行われている事がわかってきました。そこで私たちは当院倫理委員会の承認を得て、末梢血幹細胞移植による新生治療を開始しました。この方法では、まずGCSFという骨髄を刺激して自血球を増やすお薬を5日間皮下注射して、骨髄から血液中に単核球をより多く排出させます。その後約3-4時間かけて血液成分分離装置を用いて血液から単核球成分をとりだし(約100cc)、同時に単核球以外の成分は静脈に戻しながら必要な単核球を採取します。その後取り出した単核球の中から血管内皮前駆細胞を抽出して、午後より患肢に注射します。この治療法は全身麻酔を必要とせず、細胞移植時に腰からの麻酔だけで施行可能です。この方法では移植の5日前に入院してその後移植して7日後には特に問題なければ退院可能となります。
症例を紹介します。閉塞性動脈硬化症にて安静時疼痛を有する3度の72歳・男性で、平成17年3月に末梢血幹細胞移植を行いました。移植前は連日血管拡張剤を点滴しても下肢の疼痛が強かったのですが、移植後7日目には点滴なしでも冷感と疼痛も消失しました。移植後1ヶ月の下肢血管造影(図2)ですが、移植前に比べて微細な毛細血管の新生が認められます。 

    

 新しい血管新生治療について説明してきましたが、この病気の予防が最も大事です。特に閉塞性動脈硬化症は動脈硬化がその基盤にあり、動脈硬化の危険因子(喫煙・糖尿病・高脂血症・高血圧など)のある方は、定期的に血管病変の有無をチェックされることをお勧めします。「歩いていると足が痛む」「足先が冷たくなった」こんな症状をお持ちの方は、早めに病院へおいで下さい。
また安静時疼痛・潰瘍・壊死が出現している方で従来では切断しかないといわれていた方でも新生医療を行うことで足の切断を避けられる可能性があります。
 症状の程度にかかわらず、該当する患者様がいらっしゃいましたら、お気軽に当院心臓血管外科外来までお相談ください。